料理の科学を探究する:「Modernist Cuisine」でMathematicaが果たした役割
「Modernist Cuisine」著者,前Microsoft最高技術責任者,Nathan Myhrvold
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- 方程式を解くことから出版用のグラフィックスを作成することまですべてが一つのソフトウェアで可能
- 概念を視覚的に理解したり結果を提示したりするためのあらゆる種類のわかりやすいグラフィックスが作成できる
- 熱伝導やその他の現象についての微分方程式を解き,新しいテクニックを完全なものにする
チャレンジ
長年に渡るMathematicaユーザであり,Intellectual Ventures最高経営責任者,前Microsft最高技術責任者,Microsoft Research創設者,熟練したシェフでもあるNathan Myhrvold氏は「料理の裏側に潜む科学を知るシェフは多くありません」と語ります.これを変えるために,氏は熱伝導,病原体の成長と死滅,その他の技術的事柄に関する疑問とその答を「Modernist Cuisine」に取り入れました.「Modernist Cuisine」はChris Young,Maxime Biletの両シェフと共著の6巻のクックブックです.2438ページからなるこのクックブックは,料理の科学と技術を深く掘り下げています.この本はJames Beard Foundationの2012 Cookbook of the Yearに輝きました.
解決方法
Myhrvold氏は,物理とコンピュータサイエンスの研究で培った,数十年に渡るMathematicaの使用経験を生かしてこのクックブックを開発しました.
Myhrvold氏は,網焼き,氷水を使ったとき,その他の調理方法における熱伝導のモデル化を「Modernist Cuisine」に掲載するためのMathematicaコードを何千行も書きました.Mathematicaに多様な機能が盛り込まれているおかげで,Myhrvold氏は微分方程式を解き,結果をユニークなグラフィックスで可視化するということがたった一つのソフトウェアできました.「Mathematicaほど多様な機能を持つパッケージは他には知りません」とMyhrvold氏は言っています.
例:氷水で冷やす
「熱伝導がどのように起るかについての人々の直観は常に正しいとは限りません」とMyhrvold氏は述べます.氏がMathematicaで発見したことの一つに,氷水を使ったからといって,調理した食品を氷水に入れても,火から下ろしただけのときよりも速く温度が下がるとは限らないということがあります.氏のチームは,熱い食品を氷水に入れたときにどうなるかのシミュレーション行いました.「氷水に入れるのと,キッチンカウンターに置きっぱなしにしておくのとで,実際の温度変化にたいした違いはないということが分かりました.」
「氷水に入れても熱伝導が止まらない根本的な理由は,簡単に説明できます.熱が固体を伝わるとき,その速さは固体の特性,熱伝導率,食品の特性である熱拡散率で決まります.熱が伝わる速さには限界があります.私は料理するとき,外側に過剰な熱を使い,内部を熱くします.熱は特定の速さで食品の内部に伝わります.
「この食品を氷水に入れると,熱が奪われ始めることになるので,もちろん食品はさめてきます.しかし,氷水に入れる直前に加えた熱のことを考えてみてください.その熱は食品の内部へと向かっています.反対に,食品内部から外側に向かって反対方向に向かう熱もあります.内部に向かう熱はそれまでと同じ速さで伝わり,氷水に吸収される熱の速度も変わりません.どちらかがもう一方より速くなることはないのです.つまり,氷水に入れても入れなくても食品の中心の最高温度は同じであるか,非常に近いものとなります.」
利点
Myhrvold氏はMathematicaを使うことで必要な情報を得ることができ,それを視覚的に表現して他の人が利用できるようにしました.「非常に分かりやすいグラフィックスと本当に面白い科学的,工学的結果が生み出せたおかげで,クックブックは特別のものになりました」と氏は述べています.